輸配送網の再構築をどう進めるか|鈴与・いすゞ・船井総研SCの2026年8月23日物流ニュース

一般

この記事の要点

  • 船井総研サプライチェーンコンサルティングは、法改正による役職選任の義務化を踏まえ、新刊『物流ファースト経営 CLO(物流統括管理者)が導くサプライチェーン改革』を執筆した。
  • 鈴与は、2026年9月8日から開催される「第17回 国際物流総合展 2026」にて、改正物流効率化法に対応するフェリー輸送や中継輸送を含む11のサービスを出展すると発表した。
  • いすゞ自動車の山口真宏社長は、2027年度中の自動運転トラック事業化を目標に掲げ、北海道の専用テストコース一部運用開始など技術と法規制対応の課題解決を進めていると明かした。
  • 3件から見えるテーマ:経営体制の刷新、運行形態の転換、自動化技術の実装という多層的なアプローチにより、持続可能な輸配送網の再構築が進められている。

物流2024年問題による労働力不足や法改正への対応が本格化するなか、荷主企業と物流事業者の双方が従来の輸送モデルを見直す動きを強めています。単に運賃や運行ダイヤを調整するだけでなく、経営ガバナンスの刷新、中継・海上輸送への移行、そして次世代の自動運転技術の導入といった多角的な施策が同時に動き出しています。2026年8月23日に取り上げる3件のニュースは、それぞれ異なるアプローチから「持続可能な輸配送網の再構築」を推進する実態を示しています。


1.【政策】船井総研SC、CLO選任義務化に対応する新刊『物流ファースト経営』を執筆

船井総研サプライチェーンコンサルティング(東京都中央区、橋本直行社長)は、書籍『物流ファースト経営 CLO(物流統括管理者)が導くサプライチェーン改革』を執筆しました。法改正により一定規模以上の企業に対してCLO(物流統括管理者)の選任が義務付けられた背景を受け、従来の物流部長との役割の違いや求められる立ち位置、具体的な取り組み事例など全6章で解説しています。同書では、物流を経営戦略の中核に組み込むことが企業の競争力強化につながると強調しており、荷主企業だけでなく、荷主と対等な協議や提案を目指す運送会社にとっても理論的な指針となる内容となっています。

出典: 物流ウィークリー「船井総研サプライチェーンコンサルティング 新刊『物流ファースト経営』」(2026年8月23日)

編集部の見方

CLOの選任義務化は、物流を単なる「現場のコストセンター」から「経営戦略を左右する重要機能」へと位置づけ直す転換点です。現場の運行管理や個別コストの削減を担ってきた物流部長と異なり、CLOには調達・生産・販売・配送を統合的に統括し、サプライチェーン全体の持続可能性を担保する権限と責任が求められます。荷主企業が物流を経営課題として捉え直すことは、運送事業者にとっても単なる下請けではなく対等なビジネスパートナーとして条件交渉や共同改善を進める契機になります。法規制への形式的な対応にとどまらず、事業継続のための体制変革として機能させられるかが問われています。


2.【企業戦略】鈴与、「国際物流総合展 2026」で法改正対応など11サービスを出展

総合物流大手の鈴与(本社:静岡県静岡市、鈴木健一郎代表取締役社長)は、2026年9月8日から11日まで東京ビッグサイトで開催される「第17回 国際物流総合展 2026」への出展概要を発表しました。同社ブースでは、改正物流効率化法に対応した「フェリー輸送」や「スイッチ輸送(中継輸送)」、新海上輸送モデル「はこ廻船」をはじめ、EC・通販物流、最適立地・物流拠点提案、ITシステム群(PO Navigator、Logistics Tracking System、Stock Insight)など計11のサービスを紹介します。物流関連二法への対応や持続可能で効率的な物流体制の構築を目指す荷主企業に向けて、具体的な解決スキームを提示する方針です。

出典: PR TIMES「鈴与(株)、東京ビッグサイトで開催される「第17回 国際物流総合展 2026」に出展」(2026年8月20日)

編集部の見方

ドライバー拘束時間の制限が厳格化された環境下において、長距離幹線輸送を陸上トラック単体に依存し続けることは極めて困難になっています。鈴与がフェリー輸送によるモーダルシフトや、ドライバーが途中で車両・トレーラーを交換する中継輸送(スイッチ輸送)を前面に押し出しているのは、実務的な輸送力維持に不可欠な選択肢だからです。さらに、ハードウェアの輸送網だけでなく、トラッキングや在庫可視化などのITツールを組み合わせている点も注目されます。荷主企業にとっては、自社の配送網を単独で維持するのではなく、3PLが構築する多角的なネットワークやシステムをいかに柔軟に活用できるかが輸送継続の成否を分けます。


3.【技術】いすゞ自動車、自動運転トラックの2027年度事業化に向け専用コースを一部運用開始へ

いすゞ自動車の山口真宏社長は朝日新聞のインタビューに応じ、深刻化するドライバー不足の解決策として大型トラックの自動運転技術の実用化を加速させている方針を表明しました。同社は自動運転ソフトウェア開発企業等と連携して公道実証試験を進めているほか、北海道に建設中の自動運転専用テストコースを2026年夏頃から一部運用開始する予定です。特定の走行条件下でシステムが運転操作を担う「レベル4」の実現を最終ゴールに据え、2027年度中の事業化を目標に掲げています。山口社長は目標ありきではなく確信を持てる段階での実用化を強調しつつ、安全性確保や法規制への対応といった課題を順次クリアしていく姿勢を示しました。

出典: 朝日新聞「自動運転トラック、近づく事業化 いすゞ社長「物流を線でつなぐ」」(2026年8月23日)

編集部の見方

幹線輸送におけるドライバー不足は人口構造上も不可逆であり、中長期的な輸送力維持には自動運転技術の社会実装が避けられません。車両メーカーがソフトウェア企業と協業し、専用のテストコースまで設けて検証を急ぐ背景には、公道走行における極めて高い安全基準と法整備の壁を早期に突破したい狙いがあります。レベル4自動運転トラックが幹線道路で実用化されれば、長距離輸送のキャパシティ制約は劇的に緩和される可能性があります。ただし、実用化の初期段階では高速道路区間などの特定ルートに限定される見通しであるため、一般道との接続拠点(中継ハブ)の整備や荷役作業の自動化など、物流拠点側の受け入れ体制の同時並行的な整備が不可欠となります。


共通キーワード:「持続可能な輸配送網の再構築」

2026年8月23日に取り上げた3件のニュースは、経営管理・外部輸送ソリューション・車両技術という異なるレイヤーから、「持続可能な輸配送網の再構築」という共通の課題解決に向かっています。

発表主体 再構築に向けたアプローチ領域 具体的な手段・提案内容
船井総研サプライチェーンコンサルティング(新刊執筆) 経営体制・ガバナンスの変革 CLO選任を通じた物流の経営戦略統合と荷主・運送会社の対等な関係構築
鈴与(展示会出展) 輸送手段・外部リソースの最適化 フェリー輸送(モーダルシフト)やスイッチ輸送、可視化ITツールの複合提案
いすゞ自動車(事業化方針) 先端技術による運行の自動化 レベル4大型自動運転トラックの公道実証と北海道専用テストコースでの検証

物流業界が直面する輸送力不足は、小手先の運賃交渉や運行スケジュールの微調整だけで解決できる段階を過ぎています。船井総研SCが説くように荷主企業内部の意思決定体制をCLO主導へ改めること、鈴与が提案するように中継輸送やフェリーなどの多様な輸送モードを柔軟に組み合わせること、そしていすゞ自動車が進める自動運転技術によって将来の労働力制約を抜本的に緩和すること。この3者が示すように、経営判断・現場オペレーション・次世代テクノロジーの各階層が噛み合うことで初めて、途切れない物流ネットワークが実現します。


編集部の視点:EC・通販事業者が取り組むべき輸配送の多層防御

幹線輸送や制度改正を巡る議論は、一見すると大型トラックや大手製造業に特有の課題に思えるかもしれません。しかし、EC・通販物流の現場においても、輸配送網の維持は事業の存続に直結する喫緊のテーマです。翌日配送や全国一律のリードタイムを前提としてきたこれまでのECモデルは、配送キャリアの運行制約や集荷締め切り時刻の前倒しによって大きな見直しを迫られています。

EC事業者が持続可能な出荷体制を築くためには、まず受注から出荷指示に至るデータ処理のタイムラグを極小化することが求められます。鈴与の出展内容に見られる中継輸送やフェリー輸送は、従来の深夜長距離運行よりも早い段階での荷物引き渡しを要求されるケースが増加します。ECサイトやモールごとの受注データを手作業で集計・変換していると、早い集荷締め切りに間に合わず、配送リードタイムが1日延びてしまうリスクが生じます。受注管理システム(OMS)と倉庫管理システム(WMS)を密連携させ、注文が入った瞬間に倉庫へ出荷指示が届く自動化体制を整えておくことが、変化する輸配送ダイヤに適応する前提条件です。

さらに、船井総研SCの書籍が示すCLOの視点は、EC・通販事業の経営層にもそのまま当てはまります。販促キャンペーンや新商品発売の計画を立てる際、出荷拠点ごとのキャパシティや利用可能な配送キャリアの制約をあらかじめ織り込んでおく「物流を前提とした販売設計」が不可欠です。特定の一拠点・単一の運送便に依存するリスクを分散し、複数拠点からの分散出荷や多様な配送手段を選択肢として持っておくことが、これからのEC事業における安定成長の鍵となります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 2026年8月23日の物流ニュースで注目すべき発表は何ですか?

A. 主な発表は3件です。船井総研サプライチェーンコンサルティングによる法改正対応の解説書『物流ファースト経営 CLOが導くサプライチェーン改革』の執筆、鈴与によるフェリー輸送や中継輸送など11サービスを揃えた「第17回 国際物流総合展 2026」への出展発表、いすゞ自動車による2027年度事業化を目指す自動運転トラックの専用テストコース一部運用開始の公表です。

Q2. CLO(物流統括管理者)の選任によって荷主企業の何が変わりますか?

A. 従来の物流部長が現場のコスト管理や実務運行を主に管轄していたのに対し、CLOは経営層の一員として調達から販売までのサプライチェーン全体を統括します。物流の制約を考慮した事業戦略の策定や、運送事業者との対等な取引環境の構築を主導する役割を担います。

Q3. EC・通販事業者が幹線輸送の変革に対応するために必要な対策は何ですか?

A. 集荷締め切り時刻の前倒しや配送モードの多様化に対応するため、受注から出荷指示までのデータ連携を自動化して処理時間を短縮することが重要です。また、単一の配送業者や拠点に依存せず、複数拠点連携や多様な輸送手段を柔軟に組み合わせられるシステム基盤を整える必要があります。


関連記事: CLO(物流統括管理者)とは? / 物流2024年問題とは? / モーダルシフトとは?

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執筆: はぴロジNEWS編集部
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更新履歴: 2026年8月24日 公開

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