この記事の要点
- 国土交通省は2026年9月3日の報道(8月26日発表)において、2年以内に導入されるトラック適正原価制度の運賃交渉で、買いたたき防止と円滑化のためタリフ形式の「モデル運賃」を活用する想定を明らかにした。
- エスビー食品、オタフクソース、エバラ物流、T2の4社は2026年9月3日、自動運転トラックと貨物鉄道を組み合わせた関東―中国エリア間の共同輸送実証を2026年9月8日から開始すると発表した。
- シーネットは2026年9月3日、システム障害時などの出荷停止を防ぐため、帳票出力とCSV取り込みで最低限の出荷業務を継続する保険型・待機系WMS「ci.Himalayas/Standby」の提供を開始したと発表した。
- 3件から見えるテーマ:いずれも制度改変・ドライバー不足・システム障害といった不測の事態に対し、「輸送と出荷を止めない予備手段」の準備に向かっている。
ドライバー不足の深刻化やシステム障害、さらには法制度の改定など、物流現場が直面する稼働停止のリスクは多様化しています。こうしたなかで荷主や物流企業に求められているのは、平常時の運用に依存しきらず、「輸送と出荷を止めない予備手段」をあらかじめ設計しておくことです。2026年9月3日に発表・報道された3件の動向は、運賃交渉、長距離幹線輸送、倉庫システムの各領域において、不測の事態でも現場を動かし続けるための備えとして読み解くことができます。
【政策】国交省、トラック適正原価制度で買いたたき防止に向け「モデル運賃」活用を想定
国土交通省は2026年8月26日、2年以内に導入が予定されているトラック運賃の適正原価制度について、実際の運賃交渉では適正原価ではなく「モデル運賃」の活用を想定していることを明らかにしました。モデル運賃は現行の標準的運賃と同様の考え方で算定されるタリフ(運賃表)形式とし、適正原価よりも高額に設定される見込みです。すでに適正原価を上回っている運賃が制度変更によって買いたたかれることを防止する目的に加え、タリフの提示により運賃交渉を円滑に進める狙いがあります。一方で、法的拘束力を持つ適正原価とは異なりモデル運賃には拘束力がなく、空車回送と実車の扱いも流動的であるため、実際の交渉における実効性が課題とされています。
出典: 物流ウィークリー「国交省「交渉時はモデル運賃」と想定 買いたたき防止と円滑化へ」(2026年9月3日)
編集部の見方
下限運賃として機能する適正原価がそのまま交渉の基準になってしまうと、荷主側から「原価ラインまで引き下げられる」という逆の価格圧力が働くリスクがあります。モデル運賃をタリフとして提示する方針は、原価割れを防ぐ防壁を作りつつ、運賃水準の切り下げを防ぐための二重のガードレールを設ける試みと言えます。拘束力がない中で荷主と運送会社がどこまで実効性のある合意を形成できるかが、今後の実務における最大の焦点です。
【企業戦略】エスビー食品など4社、自動運転トラックと貨物鉄道による共同輸送実証を開始
エスビー食品、オタフクソース、エバラ物流、T2の4社は2026年9月3日、自動運転トラックと貨物鉄道を組み合わせた「モーダルコンビネーション」による共同輸送実証を、2026年9月8日から4日間にわたり関東―中国エリア間(往復約850km)で開始すると発表しました。複数社の商品を往路と復路で分けて共同輸送するこの方式の実証は物流業界で初めてとなります。往路ではエスビー食品の商品を埼玉県の物流センターから大阪府のエバラ物流関西第2物流センターまでT2のレベル2自動運転トラック(東名・綾瀬スマートIC〜名神・久御山JCTの約410km)で輸送し、空となった31フィート共用コンテナを貨物鉄道などで広島県のオタフクソース本社工場へ運びます。復路はオタフクソースの商品を積載して神奈川県のエバラ物流川崎物流センターまで輸送し、4社は今後レベル4自動運転や定期商用運行への参画を見据えて連携を深める方針です。
出典: LNEWS「エスビー食品、T2など4社/自動運転トラック×貨物鉄道の共同輸送実証を開始」(2026年9月3日)
編集部の見方
長距離幹線輸送におけるドライバー不足や運行制限に対し、トラック単体や鉄道単体に頼るのではなく、両者を共用コンテナでシームレスに中継する取り組みは極めて実践的です。往路と復路で異なる荷主の商品を組み合わせることで、片道運行に伴う空車リスクを回避しつつ輸送枠を安定確保する仕組みが構築されています。物流2024年問題以降、長距離輸送網の維持が難しくなるなかで、複数モードの組み合わせは事業継続に向けた有力な選択肢になります。
【技術】シーネット、システム停止時の出荷を継続する「保険型・待機系」WMSを提供開始
クラウド型倉庫管理システム(WMS)を提供するシーネットは2026年9月3日、万が一のシステム停止時にも物流業務を継続できる保険型・待機系WMSサービス「ci.Himalayas/Standby」の提供を開始したと発表しました。このサービスは日常業務用のメインWMSとは別に非常用の標準環境を待機させておくもので、メインシステム障害時には蓄積データを活用して待機環境へ切り替え、必要最低限の出荷業務を維持します。ハンディターミナルや複雑な外部システム連携をあえて使わず、CSVデータの手動取り込みとピッキングリストや納品書などの帳票出力を中心としたシンプルな運用設計を採用しています。自然災害やサイバー攻撃による拠点機能停止リスクが高まるなか、「復旧を待つ」のではなく「復旧まで現場を動かす」ことを目的に開発され、万一の保険として保有しやすい料金体系が設定されています。
出典: LNEWS「シーネット/システム復旧までつなぐ「保険型・待機系」WMSを提供開始、万一の停止に備え」(2026年9月3日)
編集部の見方
物流拠点の自動化やシステム連携が進むほど、ひとたびシステム障害が発生した際の業務麻痺リスクは大きくなります。このサービスがハンディターミナル連携などの高度な機能を省き、帳票出力とCSV取り込みという最も基本的な運用に絞り込んでいる点は、危機管理の実務として極めて合理的です。障害発生時に「完全な復旧」を待つのではなく、「最低限の出荷ラインを止めない」ための割り切った仕組みを持つことが、現場の事業継続力を大きく左右します。
共通キーワード:「輸送と出荷を止めない予備手段」
2026年9月3日の3件の動向は、対象とする領域や手段は異なりますが、いずれも「平常時の仕組みが機能しなくなった際に、現場を止めないための予備手段」をどう確保するかという問題意識で結ばれています。
| 発表主体(2026年9月3日) | 想定される停止・混乱リスク | 備えとしての予備手段 |
|---|---|---|
| 国土交通省(政策) | 制度改定に伴う運賃の買いたたきや交渉の長期化 | 適正原価より高額なタリフ形式のモデル運賃提示 |
| エスビー食品・T2など4社(企業戦略) | 長距離幹線輸送におけるドライバー不足とルート寸断 | 自動運転トラックと貨物鉄道のモーダルコンビネーション |
| シーネット(技術) | サイバー攻撃や障害によるメインWMSの機能停止 | 帳票とCSVで最低限の出荷を回す待機系WMS |
物流におけるリスクは、突発的な事故やサイバー攻撃だけでなく、制度変更に伴う交渉の混乱や、長距離ドライバーの不足といった構造的要因によっても発生します。問題が発生してから場当たり的に対処するのではなく、モデル運賃という交渉の拠り所、自動運転と鉄道を組み合わせたモーダルシフトの重層化、そして障害時にも手動帳票で出荷を継続する待機環境のように、平常時から「第2の手順」を組み込んでおく動きが加速しています。
編集部の視点:「動かないこと」が最大の損失になるEC物流のBCP
多くの事業者では、システム障害が発生した際に「ベンダーによる原因究明と復旧を待つ」という受動的な対応にとどまりがちです。しかし、シーネットの待機系WMSが示す思想のように、非常時には高度な自動化やAPI連携をあえて切り離し、CSVデータと紙のピッキング帳票という最小限の道具立てで「とにかく出荷を継続する」代替手順を持っておくことが、実効性のあるリスク管理となります。仕組みが高度化・複雑化する現代だからこそ、非常時の迂回路は極限までシンプルに保つ必要があります。
また、輸配送に関しても、特定の運送会社1社やトラック便のみに依存する体制は、運賃交渉の難航や災害・人手不足による幹線寸断のリスクを直接受けることになります。エスビー食品などの共同輸送実証のように、異なる輸送モードや複数荷主での共同化といった選択肢を日常から開拓しておくことが、不測の事態においても荷物を届け続けるための基盤となります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2026年9月3日の物流ニュースで注目すべき発表は何ですか?
A. 主な発表は3件です。国土交通省によるトラック適正原価制度における「モデル運賃」活用の想定方針、エスビー食品やT2など4社による自動運転トラックと貨物鉄道を組み合わせた共同輸送実証の開始、シーネットによるシステム障害時にも出荷を継続する待機系WMS「ci.Himalayas/Standby」の提供開始です。
Q2. 国交省が適正原価制度で「モデル運賃」を想定する理由は何ですか?
A. 法的拘束力を持つ適正原価を下限として導入した際に、すでに適正原価を上回る運賃を収受している事業者が制度変更を理由に買いたたかれるのを防ぐためです。また、現行の標準的運賃と同様のタリフ(運賃表)形式を用いることで、運賃交渉を円滑に進める狙いもあります。
Q3. WMSの障害時に倉庫の出荷停止を防ぐためのポイントは何ですか?
A. 複雑なシステム連携や自動化機能の完全復旧を待つのではなく、CSVデータの手動取り込みや紙のピッキングリスト出力など、最小限の機能で現場を動かせる待機環境やバックアップ手順をあらかじめ準備しておくことです。
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更新履歴: 2026年9月4日 公開

