この記事の要点
- 国土交通省の適正原価検討会において、日本経団連や日本新聞協会から実車率50%設定の見直しや車格別の柔軟な制度設計を求める意見が相次いでいることが2026年10月7日に報じられた。
- ダイキン工業やニプロなど6社は2026年10月6日、31ftコンテナを活用して関西と東北を結ぶ鉄道の往復ラウンドマッチング輸送を2026年10月2日に開始したと発表した。
- ハコベルは2026年10月7日、ボックスチャーターと提携し、運送手配マッチングサービスでカゴ台車やパレット単位の小ロット輸送を2026年11月から順次開始すると発表した。
- 3件から見えるテーマ:いずれも片道輸送に伴って生じる「復路の空車区間」を誰がどう負担し、どのように埋めるかという実務課題に向き合っている。
長距離の貨物輸送において、目的地で荷物を下ろした後に戻る「復路」で荷室が空いたまま走る状態は、運行コストや車両の稼働効率を大きく悪化させます。物流2024年問題以降、ドライバー不足や労働時間規制への対応が求められるなか、全走行距離のうち荷物を運んでいる割合を示す「実車率」の基準や、空車区間をいかに減らすかが重要な論点となっています。2026年10月7日に報じられた制度設計への提言、異業種による往復共同運行、小ロット混載網の提携という3件の動向は、いずれも「復路の空車区間」を現場でどう解消し、その運行費用を取引のなかでどう分担するかという共通軸で捉えることができます。
【政策】トラック適正原価の実車率設定に対し、荷主側から柔軟な見直し要望が相次ぐ
国土交通省が制度設計を進めているトラック運賃の「適正原価」において、原価算定の基準となる実車率の設定について荷主企業や団体からの積極的な意見表明が相次いでいます。2026年10月1日に開催された第3回「適正原価検討会」(山内弘隆座長)において、日本経団連はトラックのトン数ごとに実車率が異なる実態を踏まえ、車格別の実車率設定など柔軟な制度設計を提言しました。同会合では日本新聞協会も、現行の標準的運賃が採用している実車率50%の設定に対して違和感を表明し、見直しを求めています。報道によれば、適正原価制度で実車率が見直された場合、制度施行後の運賃交渉で混乱が生じ、トラック乗務員の処遇改善という本来の制度目標に影響を与える懸念が指摘されています。
出典: 物流ウィークリー「実車率に荷主側意見相次ぐ 見直しに勢い「柔軟な制度を」」(2026年10月7日)
編集部の見方
実車率50%という前提は、往路で荷物を運び、復路は完全に空車で帰庫する運行を基準とした原価計算です。荷主側から見れば、自社の運行後に運送会社が別の帰り荷を確保して実車率を高めている場合、復路の空車費用まで自社が丸ごと負担することに抵抗を抱くのは避けられません。一方で運送会社側から見れば、確実に見つかる保証のない帰り荷を前提に実車率を高めに設定されて運賃原価が引き下げられれば、復路が空車になった瞬間に赤字を被ることになります。「復路の空車区間」の発生リスクを荷主と運送会社のどちらが負うかという根本的な利害対立が、制度設計の場で本格化しています。
【企業戦略】ダイキンとニプロ、31ftコンテナを用いた関西・東北間の鉄道往復輸送を開始
ダイキン工業とそのグループ会社であるオーケー器材、ニプロ、合通ロジ、白金運輸、JR貨物の6社は2026年10月6日、31ftコンテナを活用した鉄道によるラウンドマッチング輸送を2026年10月2日に開始したと発表しました。この取り組みでは、ダイキンが堺製作所で製造した業務用エアコンとオーケー器材の空調部材を関西から宮城県の物流センターへ輸送し、復路ではニプロが秋田県大館市の拠点で製造した医療機器を大阪府内の物流センターへ運びます。末端の輸送は合通ロジがダイキンの集荷とニプロの配達を担い、白金運輸がニプロの集荷を担当します。目的地で荷を下ろした後に空車回送せず別企業の製品を積載することで往復の積載率を高め、輸送総コストの抑制とともに年間141.9トン(削減率81.0%)のCO2排出量削減を見込んでいます。
出典: LOGI-BIZ online「ダイキンとニプロ、ドライバー不足対応し鉄道の長距離ラウンドマッチング輸送開始」(2026年10月7日)
編集部の見方
鉄道コンテナによる長距離のモーダルシフトにおける最大の難所は、空コンテナを返却・回送する際の非効率とコスト負担にありました。とりわけ大型トラック1台分に匹敵する31ftコンテナは、片道だけの利用では復路の回送費が重くのしかかり、採算の維持が難しくなります。空調機器を関西から東北へ送りたいダイキンと、医療機器を東北から関西へ運びたいニプロという、出荷地と仕向地が対称関係にある異業種が手を組んだことで、「復路の空車区間」を相殺して往復の輸送力を満載化させています。鉄道貨物事業者だけでなく集配を担う複数の利用運送事業者が協調して運行を組んでいる点も、幹線輸送の実効性を高めています。
【DX】ハコベル、ボックスチャーターと提携し小ロット荷物の共同輸配送を導入
ハコベルは2026年10月7日、ボックスチャーターと加盟店契約を締結し、運送手配マッチングサービス「ハコベル運送手配」において「JITBOXチャーター便」および「JITパレットチャーター便」の取り扱いを2026年11月から順次開始すると発表しました。同サービスは従来、中型から大型トラックを中心とした法人間貸切便の手配を主軸としてきましたが、荷主層の拡大に伴い「宅配便の個建て配送では割高になるがトラック1台を貸し切るほどの量はない」という小ロット輸送の需要が増加していました。ボックスチャーターはカゴ台車やパレット単位で発注できる共同輸配送サービスであり、2026年5月時点で全国48社の運送会社が加盟しています。ハコベルはこの提携を通じて、荷量や輸送条件に応じた柔軟な配車提案を可能にするとしています。
出典: LNEWS「ハコベル/ボックスチャーターと提携、小ロット貨物の新たな選択肢を提供」(2026年10月7日)
編集部の見方
荷量が中途半端な小ロット貨物をチャーター便で手配すると、荷室の大部分が空いたまま走行することになり、実質的に空間の空車区間を荷主が買い取ることになります。さらに復路に荷物がない運行であれば、支払う運賃に対する積載効率は著しく悪化します。ボックスやパレットという定型モジュールによる混載便ネットワークをマッチング基盤に組み込むことで、荷主は1台丸ごとの運行リスクを背負わずに必要な容積分だけを発注できるようになります。マッチングサービスが単なる空車トラックと荷物の仲介にとどまらず、既存の共同配送網へのアクセス経路へと機能を拡張している点に注目すべき変化があります。
共通キーワード:「復路の空車区間」の解消
2026年10月7日に報じられた3件の動向は、適正原価の制度設計、異業種による鉄道コンテナ共同運行、配車手配サービスにおける混載便の導入と、レイヤーはそれぞれ異なります。しかし焦点を当てている実務の核心は、荷物を届けた後に生じる「復路の空車区間」を現場からいかに削り、その費用をどのような枠組みで分担・解消するかという点にあります。
| 発表(2026年10月7日) | 「復路の空車区間」に対する論点 | 解決・対応へのアプローチ |
|---|---|---|
| 日本経団連・新聞協会(適正原価の議論) | 片道空車前提(実車率50%)の費用が運賃原価に乗ることへの懸念 | 車格ごとの実態に即した実車率設定など柔軟な制度設計の提言 |
| ダイキン・ニプロ(6社連携) | 長距離モーダルシフトにおける復路コンテナの空回送コスト | 関西・東北間で異業種の製品を往復で積み合わせるラウンド運行 |
| ハコベル(ボックスチャーター提携) | 貸切便の手配に伴う荷室の空きスペースや復路の積載ロス | カゴ台車・パレット単位の混載ネットワークを活用した小ロット手配 |
トラック輸送において、走る距離に対して荷物を積んでいる距離の割合(実車率)が低下すれば、運行にかかる固定費や燃料費はすべて運賃負担へと跳ね返ります。物流ウィークリーが報じた適正原価の議論では、その空車費用を運賃原価としてどこまで認めるかが問われ、ダイキンとニプロの取り組みでは異業種が手を組んで復路そのものを実車化する運用が確立されました。ハコベルの提携は、そもそも片道の貸切手配を行わずに混載網を利用することで空車リスクを回避する手段を提供しています。3件はいずれも、空車で走る無駄をなくすことが輸送力の維持とコスト抑制の両立に直結することを示しています。
編集部の視点:「片道チャーター前提」の契約を見直し、容積単位の取引条件へ転換する
EC・通販事業者が自社の物流拠点を構え、サプライヤーからの部材調達や拠点間移送、大型商品の配送を委託する場合でも、同様の契約見直しが求められます。季節やセール時期によって出荷量が激しく変動するEC物流では、常に満車になるわけではないチャーター便を定期契約で固定化してしまうと、空気を運んでいる空間や復路の空車区間に対して過剰な支払いを続けることになります。今回のハコベルとボックスチャーターの提携に見られるように、車建て(トラック1台単位)の取引条件から、カゴ台車やパレット1枚単位という「容積・個数建て」の取引条件へと契約の選択肢を切り替えていくことが、無駄な空車費用の支払いを避ける現実的な防衛策となります。
さらに一歩進んだ荷主企業においては、ダイキンとニプロの事例のように、他社との共同運行を前提とした複数社間での契約締結(ラウンド輸送契約)を模索する動きが加速します。ただし、異業種間マッチングによる取引契約では、どちらかの荷主で荷待ちや荷役遅延が発生した際に復路の運行スケジュールが狂うリスクや、運賃按分の責任範囲を契約書上でどう明記するかという高度な取り決めが欠かせません。物流事業者任せにするのではなく、自社の輸送ルートのどこに空車区間が生じているのかを把握し、取引条件そのものを柔軟に組み替えていく姿勢が荷主企業に問われています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2026年10月7日の物流ニュースで注目すべき発表は何ですか?
A. 主な発表は3件あります。国交省の適正原価検討会において日本経団連や日本新聞協会が実車率50%設定の見直しを求めているという報道、ダイキン工業やニプロなど6社による31ftコンテナを用いた関西・東北間の鉄道往復ラウンド輸送の開始、そしてハコベルがボックスチャーターと提携し運送手配サービスで小ロット共同輸配送の取り扱いを開始したという発表です。
Q2. トラック運賃の「実車率50%」が問題視されているのはなぜですか?
A. 実車率50%は、往路に荷物を積んで復路は完全に空車で戻る運行を前提とした原価計算基準であるためです。荷主側は車格や実際の運行実態に合わせた柔軟な設定を求めており、もし帰り荷がある運行でも片道空車を前提とした高い原価が設定されれば運賃交渉で過度な負担が生じるのではないかという懸念が示されています。
Q3. ラウンドマッチング輸送にはどのようなメリットがありますか?
A. 片道輸送後にコンテナやトラックを空のまま回送せず、別の企業の荷物を積んで出発地方面へ戻ることで、往復両方の積載率を高められる点です。輸送にかかる総コストを抑制できるだけでなく、限られたドライバーや運行枠を効率的に活用でき、CO2排出量の大幅な削減にもつながります。
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更新履歴: 2026年10月8日 公開

