「倉庫内のピッキング・搬送工数」を巡る動き|国交省・DHL・東京海上日動の2026年10月26日動向

倉庫内のピッキング・搬送工数をどう確保するか 一般

この記事の要点

  • 国土交通省は2026年10月26日、物流倉庫分野における特定技能1号評価試験について、日本海事協会による出張試験方式の受付が開始されたと発表した。
  • DHLサプライチェーンジャパンはセレクトショップ大手ベイクルーズの柏沼南ロジスティクスセンターにラピュタロボティクス製自動倉庫「ASRS」を導入したと発表し、LOGI-BIZ onlineが2026年10月26日に報じた。
  • 東京海上日動火災保険は2026年10月26日、自律移動型AIロボットの機体損害や稼働停止時の代替人件費を包括補償する「AIロボット保険」を2026年11月から提供すると発表した。
  • 3件から見えるテーマ:いずれも人手不足が深刻化する倉庫現場において、ボトルネックとなりやすい「倉庫内のピッキング・搬送工数」を維持・代替するための基盤整備に向けられている。

物流2024年問題によるトラックドライバーの労働力不足が注目される一方、荷受や出荷を担う倉庫現場でも作業人員の確保難と労務費の高騰が大きな課題となっています。特に商品を探して運ぶピッキングや入出荷の搬送作業は現場工数の多くを消費するため、その作業力をいかに確保・維持するかが倉庫の稼働を左右します。2026年10月26日に発表された3件のニュースは、外国人材の受入れ試験受付という制度面、ロボットによる自動倉庫導入という設備面、そして機械停止時の代替人件費を補う保険というリスク対策面のそれぞれから、「倉庫内のピッキング・搬送工数」を安定して確保するためのアプローチとして読むことができます。


【政策】国交省、物流倉庫分野の特定技能1号評価試験で出張方式の受付を開始

国土交通省は2026年10月26日、特定技能制度の対象分野に追加された物流倉庫分野において、在留資格の取得に必要な特定技能1号評価試験(出張試験方式)の受付を試験実施団体の日本海事協会(ClassNK)が開始したと発表しました。申請者である法人が希望する会場でペーパーテストを実施する方式で個人の申請は受け付けず、海外では50枠以上、日本国内では30枠以上の受験枠から受け付けます。試験時間は1回あたり80分で1日最大3回まで実施可能となっており、受験料は日本国内が税抜き6,500円、海外が45米ドルで別途試験監督者の旅費など実費が発生します。試験実施国は日本、インド、インドネシア、フィリピンなど17カ国で、テストセンターで実施するCBT方式についても配信準備が進められています。

出典: LNEWS「国交省/物流倉庫分野の特定技能1号評価試験、出張方式の受付開始」(2026年10月26日)

編集部の見方

物流倉庫分野における特定技能評価試験の出張方式が始まったことは、人手不足に悩む倉庫事業者が自社の採用計画に合わせてまとまった人数の外国人材を評価・登用できる実務的な道が開かれたことを意味します。個人受験任せにせず法人が主導して国内外で試験枠を確保できる仕組みは、現地での教育から就労開始までのリードタイムを事業者が計画的に管理できるようにする狙いがあります。倉庫現場の作業工数が慢性的に逼迫するなかで、制度面から確実な労働力の供給ルートを築くための具体的な運用開始として注目されます。


【拠点】DHLサプライチェーン、ベイクルーズの千葉・柏拠点に自動倉庫「ASRS」を導入

DHLサプライチェーンジャパンはセレクトショップ運営大手のベイクルーズから物流業務を受託している柏沼南ロジスティクスセンター(千葉県柏市)において、ラピュタロボティクス製の自動倉庫「ASRS」を導入したと発表し、LOGI-BIZ onlineが2026年10月26日に報じました。同センターでは約1万800個のビン(小型ケース)を約60台のロボットで運用しており、ロボットが保管エリアと作業エリアを自動往復して作業者が移動せずに入出庫できる体制を構築しています。入庫時には空のビンへ商品を収納して棚の上部まで効率的に格納し、出荷時には必要な商品が入ったビンを作業エリアへ自動搬送することで仕分け作業までを一体化しました。なお、本設備の導入に伴う具体的な作業時間削減などの定量的な効果は公表されていません。

出典: LOGI-BIZ online「DHLサプライチェーンジャパン、千葉・柏のベイクルーズ向け物流拠点にラピュタロボの自動倉庫導入」(2026年10月26日)

編集部の見方

アパレルやセレクトショップのEC・店舗複合物流では、多品種少量の商品を保管し迅速に取り出すためのピッキング作業が作業工数の大部分を占めます。作業者が広大な倉庫内を歩き回る従来型の運用から、ロボットが定位置まで運ぶ「Goods to Person(GTP)」への転換は、歩行時間をゼロにしてピッキング工数を大幅に圧縮する確実な手段です。さらに従来の中量棚ではデッドスペースになりがちだった倉庫上部の空間までビンを高密度に格納することで、保管効率とピッキング効率の双方を同時に引き上げる設備投資となっています。


【技術】東京海上日動、自律移動型ロボットの停止時人件費を補償する「AIロボット保険」を提供へ

東京海上日動火災保険は2026年10月26日、AIロボットの機体損害や第三者への賠償責任に加え、稼働停止時に生じる代替人材の人件費等を包括補償する「AIロボット保険」を2026年11月から提供開始すると発表しました。対象はフィジカルAIが実装された車輪型、4足歩行、ヒューマノイドなどの自律移動型ロボットで、突発的な事故による修理や交換費用を賄う「機体補償」と対人・対物事故をカバーする「損害賠償責任」を備えています。さらに機体損害時の事業継続を支援するため、ロボット停止期間中に発生する代替スタッフの手配費用などを賄う「事業継続費用補償」が組み込まれています。なお、サイバーインシデントに起因する事故や損害については補償の対象外とされています。

出典: LNEWS「東京海上日動/「AIロボット保険」提供へ、機体損害や稼働停止等のリスク補償」(2026年10月26日)

編集部の見方

物流倉庫でのロボット自動化が進むにつれて最大の懸念となるのが、「機械が停止した瞬間に現場全体の出荷業務が止まる」という事業継続上のリスクです。東京海上日動の保険が機体の物理的な修理費用だけでなく「稼働停止時の代替人材の人件費」まで補償対象に含めた点は、自動化を進める物流事業者や荷主にとって極めて実務的な安心材料となります。機械化によって一度減らした現場作業員をトラブル時に急遽スポット手配するには割高なコストがかかりますが、その事業継続費用を金融商品としてヘッジできる環境が整ったことは、ロボット導入の心理的・財務的ハードルを大きく下げることにつながります。


共通キーワード:「倉庫内のピッキング・搬送工数」の確保

2026年10月26日に発表された3件のニュースは、いずれも倉庫現場において最も負荷が集中しやすい「倉庫内のピッキング・搬送工数」をどのように確保し、安定稼働を維持するかという課題に直結しています。

発表主体 工数に対するアプローチ 現場での具体的な手段
国土交通省(政策) 外国人労働力の供給ルート整備 特定技能1号の出張試験受付により、計画的な作業人員の採用を支援
DHLサプライチェーン(拠点設備) ロボットによる人手作業の物理的代替 ASRS(自動倉庫)の導入により、作業者の歩行を排してピッキング工数を圧縮
東京海上日動火災保険(技術・リスク対策) 機械トラブル時の作業維持・代替費用の担保 AIロボット停止時に発生する代替スタッフの人件費等を保険で補償

倉庫オペレーションにおいて、棚から商品を探し出し、梱包や仕分けエリアへ運ぶ「ピッキングと搬送」は、保管や検品と並んで現場人員の工数が最も多く割かれる工程です。労働力人口が減少する中で、制度を活用して外国人材を安定採用する動き(国交省)、ロボットを導入して人の移動工数そのものをなくす動き(DHL)、そして自動化設備の突発的な停止による出荷麻痺を防ぐために代替人件費をヘッジする動き(東京海上日動)は、異なる立場から「現場の稼働工数を切らさない」という同一のゴールを目指しています。


編集部の視点:自動化設備のダウン時に、バックアップの作業工数をどう調達するか

倉庫の自動化設備が導入される一方で、荷主企業やEC事業者にとって深刻なリスクとなるのが、「自動化システムが停止した瞬間に、当日の出荷業務が完全にストップする」という事業継続上の問題です。ASRSや自律搬送ロボットは平時のピッキング工数を大幅に削減しますが、ハードウェアの故障やシステムエラーが発生した際、人間の作業員のように「臨機応変に隣の棚から手作業でピッキングする」といった柔軟な迂回が困難な構造を持っています。東京海上日動が開発した保険に「稼働停止時の代替人材の人件費」が含まれた背景には、自動化設備が停止した局面では、急遽スポットワーカーや派遣スタッフを大量投入して人海戦術で出荷をカバーせざるを得ないという現場のリアルなリスク構造が存在します。

事業継続(BCP)の観点から検証すると、保険金によって代替スタッフの追加人件費が補填される仕組みが整ったとしても、「止まった設備の手前で、急遽集めた人員が即座にピッキングできるマニュアルや現場導線が維持されているか」という運用の壁が立ちはだかります。高密度に商品を格納する自動倉庫では、人が直接棚に入って作業すること自体が物理的に制限されるケースも少なくありません。また、特定技能外国人を中心とした人手運用に頼る現場であっても、突発的な離職や採用の遅れが発生した場合、当日の欠落した作業工数を即座に外部から補充するのは容易ではありません。

EC・通販事業者が物流拠点の自動化や委託先を選定する上では、平時の出荷能力だけでなく「設備停止時や人員不足時にどのようなフォールバック(縮退運転)体制が組まれているか」を事前に確認することが不可欠です。特定拠点の自動化設備が完全に停止した場合でも、注文データを即座に別のバックアップ拠点へ振り分けて出荷を継続できる受注管理(OMS)の仕組みや、在庫を複数倉庫に分散してリスクをヘッジする分散出荷体制を整えておくことが、自動化時代における真の事業継続力を支えます。


よくある質問(FAQ)

Q1. 2026年10月26日の物流ニュースで注目すべき発表は何ですか?

A. 主な発表は3件です。国土交通省による物流倉庫分野の特定技能1号評価試験(出張試験方式)の申請受付開始、DHLサプライチェーンジャパンによるベイクルーズ向け柏拠点へのラピュタロボティクス製自動倉庫「ASRS」の導入、東京海上日動火災保険による稼働停止時の代替人件費まで補償する「AIロボット保険」の提供開始発表です。

Q2. なぜ今、物流倉庫分野で特定技能試験の出張方式が開始されたのですか?

A. 深刻化する倉庫現場の人手不足に対応するためです。法人が希望する会場で30〜50枠以上のまとまった単位でペーパーテストを実施できるようにすることで、事業者が自社の採用計画に合わせて国内外から特定技能外国人を計画的・迅速に登用できるようにする実務的な環境整備が進められています。

Q3. AIロボットの稼働停止時に代替人件費を補償する保険が求められる背景は何ですか?

A. 倉庫作業の自動化が進むにつれ、ロボットや自動倉庫が突発的な事故や故障で停止した場合、現場全体のピッキング・出荷業務が麻痺して事業継続に直結するためです。停止期間中の出荷遅延を防ぐために急遽手配する代替作業員の人件費を補償することで、企業が自動化設備を導入・運用する際のリスクを低減する狙いがあります。


関連記事: CLO(物流統括管理者)とは? / 物流2024年問題とは? / モーダルシフトとは?

物流アウトソーシング・OMS/WMSのご相談

物流アウトソーシング、OMS・WMSなどのシステム相談は、株式会社はぴロジへ。
EC・通販事業者の受注管理から倉庫連携・出荷までをクラウドで一元化する流通統合システム「logiec(ロジーク)」と、提携倉庫を活用した物流アウトソーシングをご提供しています。

執筆: はぴロジNEWS編集部
物流業界の制度・技術・企業動向を、EC・通販物流の実務目線で読み解くメディアです。運営は株式会社はぴロジ(東京都港区虎ノ門)。

更新履歴: 2026年10月27日 公開

タイトルとURLをコピーしました