この記事の要点
- 政府は2026年10月23日、海上貿易の手続き迅速化に向け船荷証券(B/L)や倉荷証券を電子化する商法など関連法の改正案を閣議決定した。
- 資生堂ジャパンは2026年10月23日、専門店向けアプリ「Kakehashi」にバーコード読取から集荷依頼まで自動完結する「返品回収予約機能」を追加し運用を開始した。
- ハコベルは2026年10月23日、トラック予約/受付システム「トラック簿」に、事前設定ルールで接車位置を自動指定する「自動バース割り当て機能」を搭載した。
- 3件から見えるテーマ:いずれも紙の伝票や現場の個別判断に依存していた「荷受と引渡しの手続き情報」をデジタル化し、貨物移動の停滞を解消する動きである。
輸送力の維持が課題となる中、トラックの走行や船舶の運航だけでなく、貨物を相手へ手渡す現場の手続きが大きなボトルネックとなっています。物流2024年問題以降、あらゆる現場で待ち時間の短縮が求められていますが、書類の到着待ちや手書き伝票の作成、受付窓口での指示待ちといった手続きの遅れは、物流網全体の停滞を招く要因です。2026年10月23日に発表された3件のニュースは、国際海上貿易、店舗の返品、物流センターのトラック受付という異なる領域において、貨物の受渡しに伴う「荷受と引渡しの手続き情報」をデジタル化し、現場の拘束時間と業務負荷を削減しようとする試みとして共通しています。
【政策】政府、船荷証券や倉荷証券の電子化を推進する商法改正案を閣議決定
政府は2026年10月23日の閣議において、海上貿易で運送人が貨物の受取を証明し引き換えに引渡しを約束する「船荷証券」(Bill of Lading、B/L)の電子化を柱とした商法など関連法の改正案を決定しました。英国やフランス、シンガポールなどで先行する法整備を踏まえ、貿易手続きの簡素化・迅速化により産業競争力を強化する狙いで、開会中の臨時国会に提出し、成立した場合は2027年度中の施行を目指します。現行の実務では紙の証券が広く流通していますが、船が港に到着しても原本が届かず貨物の引き取りに時間を要する問題や、紛失・誤配リスクが課題でした。改正案では電子化した証券を「電子船荷証券記録」と定め、紙の証券と同様に貨物引渡し等に利用できるようにする一方、紙と電子記録の相互切り替えも認めます。さらに、倉庫事業者が発行する「倉荷証券」や、複数の輸送手段を組み合わせる「複合運送証券」も電子化の対象としています。なお、2026年9月にはShippioなどが参加する「日本貿易DX協会」が早期法改正を法務省へ要請していました。
出典: LOGI-BIZ online「船荷証券の電子化図る商法などの改正案を閣議決定」(2026年10月23日)
編集部の見方
国際物流では、貨物自体は港に到着していても、権利証券である紙のB/L原本が国際郵便で届くのを待たなければ引き出せないという「書類待ち」が長年の課題でした。原本の遅延は港頭での保管料(デマレージ)の発生を招くだけでなく、後続の国内配送や倉庫入庫の日程を狂わせる原因になります。今回の法改正で注目すべきは、船荷証券にとどまらず内陸保管に関わる「倉荷証券」や「複合運送証券」まで対象に含まれた点です。海上から内陸倉庫への引き継ぎに至るまで、権利の移転と引渡し確認を一貫して電子データで完結できれば、輸入貨物のリードタイム短縮に直結します。
【DX】資生堂ジャパン、専門店向けアプリで返品回収・集荷手続きを自動化
資生堂ジャパンは2026年10月23日、全国の化粧品専門店向けバックヤード業務効率化アプリ「Kakehashi(カケハシ)」に新機能「返品回収予約機能」を追加し、10月から運用を開始したと発表しました。Kakehashiは店頭バックヤードのDXを目的に開発されたWebブラウザアプリで、専用機器を導入せずスマートフォンやタブレットで使用可能です。店舗スタッフが返品商品のバーコードをスキャンするだけで数量や金額が自動で計算・リスト化され、同社の営業担当へ即座に情報共有されます。営業担当がアプリ上で承認すると、回収可能エリアの店舗については集荷依頼までが自動で完結する仕組みで、従来の宅配業者への個別手配や専用配送を不要にします。同社では紙伝票出力によるアナログ運用を見直すため、2024年に「紙伝票発行停止」と「店頭検品作業効率化」を掲げたプロジェクトを始動して同アプリを開発しており、2025年には日本ロジスティクスシステム協会主催の全日本物流改善事例大会で「優秀物流改善賞」を受賞しています。
出典: LNEWS「資生堂/業務効率化アプリ「カケハシ」で返品・集荷を自動化、物流最適化を推進」(2026年10月23日)
編集部の見方
小売現場からの返品処理は、手書き伝票の作成や金額確認、メーカー営業への連絡、運送会社への集荷依頼など、煩雑な手続きが集中する領域です。この手続きの重さは店頭スタッフの負担になるだけでなく、運送会社にとっても小口の返品荷物を個別回収するための非効率な集荷ルートを強いられる要因となっていました。Kakehashiの機能追加は、店舗でのバーコード読み取りから営業承認、集荷依頼までを単一のデジタル導線でつないだ点に実効性があります。返品情報を事前に正確なデータとして確定させることで、物流側も納品ルートの帰り便を活用した計画的な回収が可能となり、動脈物流と静脈物流を一体化した効率化につながります。
【技術】ハコベル、「トラック簿」に自動バース割り当て機能を搭載
ハコベルは2026年10月23日、提供するトラック予約/受付システム「トラック簿」において、トラックの行き先バースを自動で指定する「自動バース割り当て機能」の提供を開始したと発表しました。この新機能は、ドライバーや受付担当者が到着時に入力した受付情報に基づき、事前設定した条件ルールに合致するバースへ自動で車両を割り当て、接車タイミングを指定する仕組みです。同システムの「自動呼出し機能」と併用することで、物流施設への到着受付からバース割り当て、車両呼出し、退場記録までの工程を無人で処理できるようになります。また、バースの割り当て条件は各物流施設の運用ルールに応じて柔軟にカスタマイズ運用が可能で、施設ごとの荷役条件に対応します。同社は従来、ベテラン担当者が車両ごとの荷物内容や空き状況を見極めて判断・指示していた属人的な業務を自動化することで、物流施設運営の大幅な省人化を支援するとしています。
出典: LNEWS「ハコベル/「トラック簿」に自動バース割り当て機能、物流施設の省人化を支援」(2026年10月23日)
編集部の見方
物流施設におけるトラックの荷待ちは、荷役作業そのものの遅れだけでなく、到着後に「どのバースに接車すべきか」が決まるまでの受付窓口での滞留によっても発生します。積載荷物の種類や作業員の配置、荷役機器の空き状況などを踏まえてバースを決める作業は、現場管理者の経験則に依存しがちでした。ハコベルが提供した機能は、割り当てルールを事前にシステム定義することで、現場での判断業務そのものを省くアプローチです。受付から呼出しまでが自動化されれば、受付窓口の人員常駐が不要になるだけでなく、ドライバーの指示待ち時間を削り、限られたバースの回転率を最大化することにつながります。
共通キーワード:「荷受と引渡しの手続き情報」
2026年10月23日に発表された3件は、国際航路、店舗バックヤード、物流センターの搬出入口と、活動する領域は異なります。しかし、いずれも貨物を受け渡す際に発生する「荷受と引渡しの手続き情報」をデジタル化し、現場の停滞を解消しようとしている点で共通しています。
| 発表主体(2026年10月23日) | 対象となる「荷受と引渡しの手続き情報」 | デジタル化による解決手段 |
|---|---|---|
| 政府(商法改正案閣議決定) | 貨物の引取り権を証明する船荷証券・倉荷証券などの書類 | 電子船荷証券記録の法制化によるペーパーレス流通 |
| 資生堂ジャパン(アプリ機能追加) | 店舗から発生する返品商品の明細・承認・集荷依頼情報 | バーコードスキャンによる自動リスト化と集荷依頼の自動完結 |
| ハコベル(トラック簿機能追加) | 入場車両の受付情報と接車バースの指定・呼出し指示 | 事前設定ルールに基づくバースの自動割り当てと自動呼出し |
貨物が次の工程へと移動する境界では、必ず「誰が正当な受取人か」「どの品目を何点引き渡すか」「どの作業場所へ接車するか」という確認手続きが発生します。これまでは、その情報伝達を紙の原本郵送や手書き伝票、窓口担当者の目視確認に頼ってきました。そのため、貨物自体は現場に到着していても書類が届かないために動かせなかったり、伝票記入や窓口受付の順番待ちで人や車両が拘束されたりする現象が常態化していました。3件の動向は、物理的な輸送を円滑に進めるためには、貨物の移動に先行して手続き情報をデータで届ける仕組みが不可欠であることを示しています。
編集部の視点:受渡し手続きのデジタル化が変える「荷主と物流会社の責任分界」
EC・通販物流のアウトソーシングにおいても、荷受と引渡しの手続き情報は、3PL事業者と荷主企業の間で摩擦が生じやすい契約上の境界線です。サプライヤーから倉庫へ商品が入庫する際、事前出荷情報(ASN)と現品票の記載内容に食い違いがあれば、現場での照合作業や確認待ちが発生します。また、ECの返品受入において、購入者の返品理由や明細が事前にデータ連携されていなければ、倉庫側で1点ずつ荷姿を開封して確認しなければなりません。契約上「入庫料」や「返品処理料」として一括の単価が定められていても、実態として手作業による確認工数が膨らめば、倉庫側は採算割れのリスクを抱え、荷主側は検品遅延による再販機会の喪失を被ることになります。
手続き情報のデジタル化が進むことは、単なる省人化にとどまらず、荷主と物流事業者の責任分界点を契約上明確に定義し直す契機になります。受渡しのための情報がどのような形式で、いつまでに引き渡されるべきかがシステム上で規定されれば、「データに不備があった場合の確認工数はどちらが負担するのか」「受付から接車までの待機時間が一定を超えた場合の費用負担をどう設定するのか」といった条件を、客観的な事実に基づいて契約条件のテーブルに乗せることができます。手続きの曖昧さを現場の負担に押し込めるのではなく、明確なデジタルルールとして契約に組み込むことが、持続的なパートナーシップを築くための前提となります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2026年10月23日の物流ニュースで注目すべき発表は何ですか?
A. 主な発表は3件あります。政府による船荷証券(B/L)や倉荷証券などの電子化を推進する商法など関連法改正案の閣議決定、資生堂ジャパンによる化粧品専門店向けアプリ「Kakehashi」への返品回収予約機能の追加運用開始、ハコベルによるトラック予約/受付システム「トラック簿」での事前ルールに基づき接車位置を自動指定する「自動バース割り当て機能」の提供開始です。
Q2. 船荷証券(B/L)が電子化されると輸入業務にはどのような利点がありますか?
A. 貨物の引換証である紙のB/L原本が国際郵便で届くのを待つ必要がなくなるため、港に到着した貨物を即座に引き取れるようになります。これにより、港頭コンテナヤードでの保管料(デマレージ)の発生を防げるほか、後続の国内配送や倉庫への入庫手配を前倒しでき、サプライチェーン全体のリードタイム短縮につながります。
Q3. 物流センターにおけるバース割り当ての自動化は、なぜ待機時間の削減につながるのですか?
A. 到着車両の積荷や作業員の配置、バースの空き状況をベテラン担当者が目視で確認して判断していた属人的な業務を、事前設定したルールに基づいてシステムが瞬時に自動処理するためです。受付窓口での順番待ちや指示待ちの時間をなくし、到着から接車までの流れを滞りなく進められるようになります。
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更新履歴: 2026年10月24日 公開

