この記事の要点
- 国土交通省の「適正原価検討会」は2026年10月中に第4回会合を開き「論点整理」へ進む方針で、物流ウィークリーは2026年10月11日に実運送事業者の意見表明の重要性を報じた。
- DHLサプライチェーンジャパンは2026年10月8日、ベイクルーズの柏沼南ロジスティクスセンターに約10,800個のビンと約60台のロボットで構成される自動倉庫(ASRS)を導入したと発表した。
- ロジネットジャパンは2026年10月11日、荷捌き場を約2倍に拡張し定温倉庫を備える「LNJ帯広センター(仮称)」の起工式を9月29日に執り行ったと報じられた(竣工は2028年1月予定)。
- 3件から見えるテーマ:いずれも輸配送の前後に発生する荷捌き場と保管スペースの運用見直しと処理能力の拡張に向かっている。
物流2024年問題によってドライバーの拘束時間管理が厳格化する中、輸送効率を左右する鍵として浮上しているのが、トラックが接車する荷捌き場と保管スペースの処理能力です。2026年10月11日に報じられた3件の動向は、法制度の設計、既存拠点の上部空間活用、中継拠点の物理的拡張という異なるアプローチから、荷物の受け入れ・保管現場が直面する限界を解消しようとする動きとして読むことができます。
【政策】適正原価検討会、10月にも論点整理へ移行
国土交通省が開催する「適正原価検討会」について、物流ウィークリーは2026年10月11日、同検討会が2026年7月と8月に計2回開催された経緯を経て、10月中にも予定される第4回会合で早くも「論点整理」へと移行する意向であると報じました。同省は検討の中で重要な論点を再三指摘しており、検討会の委員からも明確な異論は示されていません。同紙は、2年後に施行されるトラックの適正原価制度に向けて、現場の実態改善を求める実運送事業者が今こそ意見表明を行うべき重要な局面を迎えていると指摘しています。
出典: 物流ウィークリー「適正原価 実運送事業者は「論点整理」に意見表明を」(2026年10月11日)
編集部の見方
トラック運送における適正原価の議論は、単なる走行距離ごとの運賃改定にとどまりません。荷待ち時間や荷役作業、付帯業務といった、これまで運賃の中に曖昧に丸め込まれがちだった現場の実作業に対して、個別の原価や対価をどう明確化するかが根本の焦点です。荷主側から見れば、荷捌きスペースの狭さや入出庫手続きの滞留によって積卸しに時間がかかる現場ほど、将来的に実質的な輸送コストが増加するリスクを抱えることになります。運送事業者にとっても荷主にとっても、運行の外側にある現場の荷役実態を可視化することが避けられない実務課題となっています。
【技術】DHLサプライチェーンジャパン、ベイクルーズ向け拠点に自動倉庫を導入
DHLサプライチェーンジャパンは2026年10月8日、アパレル等の店舗販売およびEC事業を展開するベイクルーズの柏沼南ロジスティクスセンターに自動倉庫システム「ASRS」を導入したと発表しました。新設備は約10,800個の小型保管ケース「ビン」と約60台の搬送ロボットで運用され、ロボットが保管エリアと作業エリアを自動往復することで作業員が移動せずに入出庫作業を行える仕組みです。同センターは2016年に4拠点を集約してBtoBとBtoCの双方を担ってきた経緯があり、従来の中量棚では活用しきれなかった上部空間を活用することで、拠点を増設せずに約5年後の事業成長にも対応可能な保管・処理体制を整えました。
出典: PR TIMES「DHLサプライチェーンジャパン、ベイクルーズ向け物流拠点にASRS(自動倉庫)を導入し、成長戦略を支援」(2026年10月8日)
編集部の見方
アパレルをはじめとするEC物流では、取り扱いSKU数の増加に伴って保管スペースが逼迫し、増床や拠点の分散を選択せざるを得ない局面が頻繁に訪れます。しかし拠点の複数化は横持ち輸送の発生や在庫の重複保管を招き、管理コストを押し上げる要因になります。今回の取り組みは、平面的に倉庫面積を広げるのではなく、既存拠点の上部空間を高密度に使い切ることで固定費を抑え込む現実的なアプローチです。作業員が歩き回るピッキング動線をなくし、ロボット搬送によって入出庫処理を局所集中させた点は、人手不足への対応と保管効率を高度に両立させた好例と言えます。
【拠点】ロジネットジャパン、荷捌き場を倍増した帯広センターを着工
ロジネットジャパンは、北海道帯広市の工業団地に「LNJ帯広センター(仮称)」を新設することを決定し、2026年9月29日に起工式を執り行ったと2026年10月11日に報じられました。2028年1月の竣工を予定しており、竣工後の運営は同社の連結子会社である札幌通運が担当します。新拠点は敷地面積1万4,877平方メートル、鉄骨造り2階建てで延べ床面積は3,045平方メートルとなり、既存施設と比較して荷捌き場を約2倍に拡張します。トラックバースにはウィング車が直接接車して側面からスムーズに積み下ろしできる構造を採用するほか、定温倉庫の新設やJR貨物「帯広貨物駅」へのアクセスを活かし、道東全域をカバーする広域中継施設としての機能も持たせる計画です。
出典: 物流ウィークリー「ロジネットジャパン LNJ帯広センター建設へ」(2026年10月11日)
編集部の見方
農産品をはじめとする広域輸送では、トラックが到着した際にいかに迅速に荷役を終えて次の行程に引き継げるかが集配効率を左右します。荷捌き場を倍増させ、ウィング車の側面荷役に対応したバースを設けた設計は、車両の滞留時間を最小化するための明確な意思の表れです。また、JR貨物駅に近い立地を活かした定温中継機能は、トラックの長距離運行を鉄道へと切り替えるモーダルシフトの受け皿としても機能します。中継拠点における荷捌きと保管の設備能力を高めることが、地域全体の輸送力を底上げする条件になっています。
共通キーワード:「荷捌き場と保管スペース」
2026年10月11日の3件は、政策・技術・インフラとレイヤーは異なりながらも、配送網の結節点である荷捌き場と保管スペースの制約をどう取り除くかという課題で一致しています。
| 発表(2026年10月) | 荷捌き場・保管スペースの課題 | 手段 |
|---|---|---|
| 国土交通省(適正原価検討会) | 運送に付随する荷役作業や待機の対価が不明確 | 10月中の論点整理に向けた原価・料金の制度設計 |
| DHL(自動倉庫ASRS導入) | 保管棚の上部空間未活用とピッキング歩行の負荷 | 約10,800ビンの立体高密度保管と自動搬送 |
| ロジネットジャパン(帯広センター新設) | 荷捌き場の狭小による積み下ろし停滞と温度管理 | 荷捌き場の倍増・ウィング車直付けバース・定温倉庫新設 |
トラックを調達し荷物を目的地へ運ぶという行為は、必ず「荷捌き場での積み下ろし」と「倉庫内での保管・仕分け」という物理的な接点を介します。物流2024年問題によってドライバーの拘束時間に厳しい制限が課される中、トラックが長時間止まる荷捌き場や、入出庫のボトルネックとなる保管設備を放置したままでは、配送計画を工夫しても物流網全体が破綻します。公的制度の設計(国交省)、既存拠点の立体自動化(DHL)、地方中継拠点の物理的拡張(ロジネットジャパン)と、すべての動きが現場の荷捌き場と保管スペースの処理限界を突破しようとする方向で一致しています。
編集部の視点:荷役料と保管料の分離が、荷主の物流原価を塗り替える
トラック運賃と荷役作業費を切り離して請求する動きや、倉庫内での保管効率化は、荷主企業の損益計算書における物流コストの内訳を根本から変えつつあります。これまで多くの荷主にとって、輸送費用は運賃として一括で処理され、納品先での荷降ろし時間や積み込み時の待機時間は見えないコストとして運送事業者に吸収されてきました。しかし、適正原価の制度化によって荷役作業や待機に対する個別の料金設定が進めば、荷捌き効率の悪い荷主ほど、運賃とは別枠の附帯費用がダイレクトに請求されることになります。運送費と荷役費の境界線が明確になることで、現場の受入体制の不備はそのまま荷主の直接費用として表面化します。
同様のコスト構造の変化は、倉庫内の保管スペースと作業費の間でも起きています。EC・通販事業者が成長する過程でアイテム数が増加すると、坪あたりの保管料や棚番管理の固定費が膨らみ、作業員の歩行時間増加に伴う人件費の上昇が利益を圧迫します。DHLの事例のように、立体空間を活用した自動倉庫によって保管効率を極限まで高める投資は、初期費用こそ発生するものの、将来的な増床に伴う拠点追加コストや分散による管理ロスを抑制する効果を持ちます。荷主企業は、「平米あたりの保管料」という単価の安さだけで倉庫を選ぶのではなく、空間の充填率や入出庫スピードがトータルの作業委託料をいかに押し下げるかという視点で拠点を評価しなければなりません。
これからの物流コスト管理において重要なのは、運賃、保管料、荷役作業料という各費目をブラックボックスにせず、どこにボトルネックと無駄な費用が発生しているかを正確に把握することです。荷捌き場での積み下ろしが迅速に完了し、倉庫内でのピッキング動線が最短化されていれば、運送事業者からの待機料請求を防ぎ、庫内作業の請求単価も抑えられます。流通統合システム「logiec」や物流アウトソーシングを検討する荷主企業にとっても、自社商品の荷姿や出荷頻度に応じた保管スペースの設計と、荷受・出荷が滞らない拠点運用を組み立てることが、中長期的な収益性を左右する防衛策となります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2026年10月11日の物流ニュースで注目すべき発表は何ですか?
A. 主な発表は3件です。国土交通省の適正原価検討会が10月中にも「論点整理」へ移行する方針であることが報じられたこと、DHLサプライチェーンジャパンがベイクルーズの拠点に約10,800個のビンを運用する自動倉庫(ASRS)を導入したこと、ロジネットジャパンが荷捌き場を約2倍に拡張する「LNJ帯広センター(仮称)」の起工式を実施したことです。
Q2. 国交省が進めるトラックの「適正原価」制度で荷主企業は何に注意すべきですか?
A. 走行にかかる運賃だけでなく、積み下ろし作業や待機時間といった現場の荷役実態に応じた対価の明確化が進む点に注意が必要です。自社や納品先の荷捌き環境が悪くドライバーを拘束させている場合、運賃とは別に附帯作業料や待機料の負担が直接的に発生する可能性があります。
Q3. 既存の倉庫を拡張せずに自動倉庫(ASRS)を導入する利点は何ですか?
A. 天井付近の上部空間を高密度に活用できるため、倉庫面積を広げたり別拠点を新設したりすることなく保管能力を拡大できます。また、商品を作業者の手元まで自動搬送する仕組みにより庫内を歩き回る移動時間を削減でき、人手不足への対応と出荷処理の迅速化を同時に達成できます。
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更新履歴: 2026年10月12日 公開

